機密書類を社内保管する5つのリスク


契約書、顧客名簿、人事・給与資料、見積書、請求書控え——。
企業には今も多くの「紙の機密書類」が存在します。
ところが、紙は一度作ると“とりあえず社内の棚へ”となりやすく、気づけば保管が常態化。
しかも、社内保管は「お金がかからない」ように見えて、実はリスクと見えないコストを抱えています。
ここでは、機密書類を社内保管する際に見落とされがちな5つのリスクを整理し、今日からできる対策もあわせて解説します。
1)管理が属人化しやすい(“誰がどこに何を”がブラックボックス化)
社内保管で最も起こりやすい問題が、管理の属人化です。
「契約書はAさんの机の引き出し」「人事書類はBさんしか場所を知らない」など、担当者が変わった瞬間に分からなくなるケースは珍しくありません。
属人化が進むと、
- 必要なときに見つからない(探す時間=コスト)
- 保存期限や廃棄対象が把握できない
- 同じ書類を再発行・再作成して二重管理になる
といった非効率が積み上がります。
対策:保管場所・文書分類・保存期限を箱や台帳で“見える化”し、担当者が変わっても回る仕組みにすること。
最初は主要書類だけで十分です。
2)保管場所のセキュリティ不足(鍵・権限・持ち出しの穴)
紙の情報漏えいは、サイバー攻撃よりも「物理的な隙」から起こりがちです。
社内保管の場合、次のような状態になっていないでしょうか。
- キャビネットが施錠されていない
- 共有棚に機密書類が混在している
- 夜間の入退室管理が弱い
- 複合機の近くに出力物が置かれっぱなし
- “廃棄待ち”の段ボールが放置されている
「社内だから大丈夫」という思い込みが、実は一番危険です。
出入り業者や来客、派遣社員など、人の動きがあるオフィスほどリスクは高まります。
対策:施錠・権限管理・持ち出しルールを明確化し、機密は“置き場所を固定”する。
出力物の放置をなくすなど、日常動線に沿ったルールが重要です。
3)災害・事故への備えが不十分(火災・水害・漏水で一気に失う)
紙は災害に弱い資産です。地震・火災・水害・漏水・停電などが起きたとき、社内保管の書類は物理的に破損・消失する可能性があります。特に、
- 低層階の倉庫・バックヤードでの保管
- 段ボール直置き
- 湿気やカビ対策不足
- 消火設備や防水対策が不十分
といった条件が重なると、被害が拡大しやすくなります。
さらに厄介なのは、災害後に「どの書類が失われたのか」が分からなくなることです。
復旧・再発行・取引先対応など、業務停止の影響も大きくなります。
対策:重要文書は保管場所の安全性(浸水・火災リスク)を見直し、紙の“代替手段”を用意する(スキャン・バックアップ・別拠点保管など)。最低限、文書一覧(台帳)だけでも整備すると復旧が早くなります。
4)廃棄ルールが曖昧になりがち(“捨てられない”が最大のリスク)
社内保管が長期化すると、「いつ捨てていいか分からない」状態になり、書類が増え続けます。
増えるほど管理は雑になり、結果として以下が起こります。
- 保存期限超過の書類が大量に残る
- 年度末に一気に廃棄して運用が崩れる
- シュレッダーが追いつかず滞留が増える
- 通常ゴミへの混入や取り違えが起きる
情報漏えい事故の多くは、処理方法よりも**廃棄前の滞留(置きっぱなし)**から起こります。
対策:保存期限を決め、期限到来分は定期的に廃棄する“仕組み”を作ること。
廃棄方法は統一し、記録(廃棄日・箱数・担当)を残すだけでも事故は減ります。
5)情報漏えい時の責任が重い(信用・取引・法的対応まで波及)
万一情報漏えいが起きた場合、影響は「謝れば終わり」ではありません。
個人情報、取引条件、原価情報、人事情報などが漏れれば、
- 取引先への説明・報告
- 原因調査・再発防止策
- 契約や取引条件の見直し
- 信用毀損、採用への影響
など、企業活動の根幹に波及します。
特に紙の漏えいは「管理が甘かった」と評価されやすく、責任が重くなりがちです。
だからこそ、“起きてから対応”ではなく、“起きない運用”が重要です。
対策:機密区分の明確化、保管ルールの統一、廃棄の確実化(復元困難な方法)と証跡(記録・証明)の整備が、説明責任を支えます。
社内保管のリスクは「仕組み」で減らせる
機密書類の社内保管は、
- 属人化
- 物理セキュリティの穴
- 災害・事故への弱さ
- 廃棄ルールの曖昧化
- 漏えい時の責任の重さ
という5つのリスクを抱えます。
大切なのは、担当者の注意に頼らず、保管・廃棄を“ルール化”して運用を固定すること。
まずは主要書類だけでも、保存期限の見える化と定期廃棄の仕組みから始めると、社内の負担とリスクは現実的に下げられます。

